唐招提寺は南都六宗の1つである、律宗の総本山です。1998年に「古都奈良の文化財」の遺産群の1つとして、世界文化遺産に登録されました。
たび重なる渡航の失敗を経て唐から日本を訪れた鑑真が、5年間東大寺で過ごした後、759年に戒律を学ぶ人々のための修行の場として開いたのが始まりです。当初は「唐律招提」という名の私寺で、修行と居住ができるよう、僧房・食堂・講堂などが建てられました。金堂は鑑真没後の8世紀後半に弟子の1人である如宝が中心となって建立し、五重塔は810年に創建されたと考えられています。
平安時代に一度衰退しましたが、鎌倉時代に覚盛上人が復興したり、江戸時代に5代将軍徳川綱吉の母である桂昌院が援助したりして、現在まで創建当初の建造物が伝えられています。五重塔は、1802年の雷によって焼失しました。
金堂と講堂の間にある鼓楼には、鑑真がもたらした舎利を収めています。金堂には盧舎那仏坐像、講堂には弥勒如来座像を安置するほか、期間限定で開館している新宝蔵では唐招提寺が所蔵する貴重な文化財を展示。境内の建物を巡りながら、当時の仏教信仰に思いをはせてみてください。
国宝の鑑真和尚坐像を安置している御影堂と、鑑真和尚御廟近くの供華園には、鑑真の故郷である中国揚州から贈られた瓊花(ケイカ)が植えられています。4月中旬から5月にかけてアジサイのような白くて小さな花が咲くので、季節を合わせて訪れるのもおすすめです。